紀州梅効能研究会は梅・梅干し・梅リグナンの様々な健康効果を医学的に検証・解明しています。

紀州梅効能研究会

研究成果

アルコール性胃潰瘍への梅エキスの抑制効果

麻布大学環境保健学部病理学研究室
岸川正剛、荻原喜久美、納谷裕子

梅干しを代表とする梅加工品は、古くから日本では健康食品として食され、殺菌、制菌、解毒、整腸作用などが言い伝えられている。また日本人の主食はご飯であり、消化によい肉などと違って胃の中に長時間、貯留する事が多く、そのため慢性的な胃酸過多を生じ、慢性胃炎や潰瘍を引き起こしやすい人種と云われている。
このような胃炎や胃潰瘍の予防に梅が効くという言い伝えがあったが、医学的見地から、未だ、明確にされていない。そこで、このような胃疾患に対して梅肉エキスの医学的効果が実際にあるのかを検討するため、予防および治療面で病理学的に解明することとした。
まずラットに胃潰瘍を確実に作成することから始め、ヒトが通常摂取する1日3g相当量の梅肉エキス(株式会社西山社製)を潰瘍形成前後に投与し、胃潰瘍への効果を検討した。

実験には体重150gの5週齢雄ラット(日本エルエルシー株式会社)を予防群8匹、治療群8匹、陽性コントロール群(胃潰瘍形成)6匹、陰性コントロール群(梅肉エキス投与し通常飼育)8匹をそれぞれ用いた。
予防群は2日間絶食させ、3日目に梅肉エキス0.06g(0.5ml)を胃カテーテルで、直接、胃内へ投与した。梅肉エキス投与後の1時間後に35%食塩水0.5%を投与し、さらに10分後に0.2mol塩酸/70%エタノール液を投与した。
この同様の作業を5日間連続で実施した。その間、水と餌はごく少量与えた。治療群は2日間絶食させ、3日目に35%食塩水0.5mlを、さらに10分後に0.2mol塩酸/70%エタノール液を投与し、1時間後に梅肉エキス0.06g(0.5ml)を投与した。
この同様の作業を5日間連続で実施した。その間、水と餌はごく少量与えた。陽性コントロール群は2日間絶食させ、1時間後に35%食塩水0.5%を投与し、さらに10分後に0.2mol塩酸/70%エタノール液を投与した。
この同様の作業を5日間連続で実施した。その間、水と餌はごく少量与え、梅エキスは与えなかった。すべての実験群を実験開始から8日目に解剖し、胃の検査を行った。

まず、ラットの胃に確実に胃潰瘍を形成させる方法として、最初に35%食塩水を飲ませて、胃表面の粘液をはがし、その後0.2mol塩酸70%アルコールを投与すると90%以上の確率で出血性の胃潰瘍が形成されることが分かった。
このようにしてラットに作った胃潰瘍形成の前後に、梅肉エキスを飲ませることで胃潰瘍の予防ないし治療効果について観察したところ、著しい効果を認めることができた。すなわち、最初に梅肉エキスを投与した予防群では、ヒトの胃に相当する腺胃部に、潰瘍形成は認めなかった。また、潰瘍形成後に梅肉エキスを投与した治療群でも潰瘍形成は認めず、びらんが少数残っている程度だった。
この様に、ラットの胃潰瘍は梅肉エキスを飲むことによって、確実に予防および改善されることが分かった。

[梅肉エキスを投与しなかったラットの胃]

梅肉エキスを投与しなかったラットの胃

[梅肉エキスを投与したラットの胃]

梅肉エキスを投与したラットの胃
参加企業

和歌山県産農産物の機能性を医学的、科学的に解明することを目的とした機能性医薬食品探索講座は、梅加工会社の寄付により大阪河﨑リハビリテーション大学内に設置運営されています。

梅干博士

宇都宮 洋才(うつのみや ひろとし)
医学博士。専門は病理学。言い伝えの域をでなかった梅干しの効能を国内外の共同研究によって医学的に解き明かす。梅干博士として知られ、マスコミや講演でも活躍。2022年4月より、大阪河﨑リハビリテーション大学 機能性医薬食品探索講座 教授。

メディア紹介
  • あさイチ(NHK総合テレビ)
  • Rの法則(NHK Eテレ)
  • ためしてガッテン(NHK総合テレビ)
  • 林修の今でしょ!講座(テレビ朝日)
  • 主治医のみつかる診療所(テレビ東京)
関連リンク