紀州梅効能研究会は梅・梅干し・梅リグナンの様々な健康効果を医学的に検証・解明しています。

紀州梅効能研究会

研究成果

梅肉エキスの糖尿病に対する医学的効果

岸川正剛、荻原喜久美、納谷裕子、山口恵子
麻布大学環境保健学部病理学研究室

日本では長く続く飽食や不況によるストレスなどによって、働き盛りの中高年に年々、糖尿病患者の増加傾向が見られ、社会問題となりつつある。そこで今回、糖尿病に対して梅肉エキスが医学的効果を示すのかどうかを検討するために、大塚製薬株式会社が開発した糖尿病発症系OLETFラット及び非糖尿病発症系LETOラットを用い、梅肉エキスを飼料に添加した場合と、飲料水中に添加した場合の糖尿病ラットへの影響について、臨床血液学的、臨床化学的ならびに病理学的に検討を行った。
その結果、普通固形飼料摂取の糖尿病発症系ラット群及び非糖尿病発症系ラット群の順調な体重増加に比べ、1%梅肉エキス添加飲料水の非糖尿病発症系ラット群及び1%梅肉エキス添加飲料水の糖尿病発症系ラット群において著明な体重の減少が認められた。これらに対して、2%梅肉エキス添加固形飼料飼育の糖尿病発症系ラット群及び非糖尿病発症系ラット群は、共に普通固形飼料摂取の非糖尿病発症系ラット群と同じ体重の増加が認められた。これらの結果から注目すべき点は、飲料水及び固形飼料中に梅肉エキスを加え、摂取させるとダイエット効果が見られ、特に飲料水添加により、さらに強い効果があることが示唆された。また、臨床血液学所見結果から著変は認められなかったが、臨床化学検査所見から、1%梅肉エキス添加飲料水の糖尿病発症系ラット群に、トリグリセリドの減少と血糖値の低下が認められ、明らかに、高血糖の改善が認められた。しかし総コレステロール値は各群において全て正常範囲を示した。この様に総コレステロール値に変化が認められなかったのは、糖尿病発症系ラットが高コレステロール血症になる前の段階で実験を終了したためと考えられる。
病理検査では肉眼所見から、糖尿病発症系ラット群では、普通固形飼料摂取群の肝臓が黄色調を帯びている症例が多く認められたのに対して、糖尿病発症系ラットの1%梅肉エキス添加飲料水群、2%梅肉エキス添加固形飼料群ではやや正常に近い黄褐色調を示した。これらに対して、非糖尿病発症系ラット群では全ての群に正常の赤褐色を示した。さらに、組織学的的所見から、糖尿病発症系ラット群の普通固形飼料摂取群はすべて肝小葉全体にび漫性の脂肪変性が認められ、特に中心静脈の周辺部に強く認められた。しかし、糖尿病発症系ラットの1%梅肉エキス添加飲料水群及び2%梅肉エキス添加固形飼料群では共に、肝小葉の周辺部だけに脂肪変性が残存して認められ、中心部に脂肪変性が認められなかった。非糖尿病発症系ラットでは、全ての群において、肝の脂肪変性は認められなかった。
以上の臨床化学的及び病理学的所見結果から、梅肉エキスには糖尿病及び高脂血症を抑制する成分が含まれていることが分かった。今後はさらに長期間投与した場合の梅肉エキスの効果について検討し、梅肉エキス中の有効成分およびその薬理作用の解明により、これらの糖尿病及び高脂血症に対する抑制効果を発揮する新しい治療法が開発されることが期待される。

参加企業

和歌山県産農産物の機能性を医学的、科学的に解明することを目的とした機能性医薬食品探索講座は、梅加工会社の寄付により大阪河﨑リハビリテーション大学内に設置運営されています。

梅干博士

宇都宮 洋才(うつのみや ひろとし)
医学博士。専門は病理学。言い伝えの域をでなかった梅干しの効能を国内外の共同研究によって医学的に解き明かす。梅干博士として知られ、マスコミや講演でも活躍。2022年4月より、大阪河﨑リハビリテーション大学 機能性医薬食品探索講座 教授。

メディア紹介
  • あさイチ(NHK総合テレビ)
  • Rの法則(NHK Eテレ)
  • ためしてガッテン(NHK総合テレビ)
  • 林修の今でしょ!講座(テレビ朝日)
  • 主治医のみつかる診療所(テレビ東京)
関連リンク